『ゆきうさぎのお品書き 8月花火と氷いちご』
『ゆきうさぎのお品書き 8月花火と氷いちご』
著者:小湊 悠貴(こみなと ゆうき)
出版:集英社オレンジ文庫 出版年:2016年7月25日
ページ数:246p ISBN:9784086800945 価格:550円+税
<あらすじ>
小料理屋「ゆきうさぎ」でバイトを続けている大学生の碧。若店主の大樹は最近、豚の角煮の研究をしている。先代の女将が、唯一レシピを教えてくれなかった料理だそうだが、その理由とは一体…?
暖簾をくぐれば“おいしい”が聞こえる、小料理屋が舞台のほっこりドラマ。仲直りの手まり寿司、憂鬱に効くメンチカツ、再会の日替わりかき氷……などをご用意しています。
(引用元:『ゆきうさぎのお品書き 8月花火と氷いちご』裏表紙)
「序章 夏のはじめの店開き」
前の巻のおさらい的なお話。
こんな雰囲気のお話ですよ、と思い出してもらう導入で、物語に入りやすい。1巻は大晦日で締めくくられていたので、読者の知らない空白の期間があるが、それもいつもどおりの「ゆきうさぎ」だったんだろうなと推測できるような書き方をされている。
「第1章 2月と大樹のとろとろ角煮」
先代女将である祖母から料理を教わっていた大樹は、豚の角煮だけレシピを教わっておらず、自己流で先代の味を研究していた。遺品整理の際に見つけたレシピで角煮を作ってみたが、女将の味を知っている常連は「違和感がある」と言う。
祖母に料理を習うっていい環境。柚咲は祖母の料理にあまり馴染みがないのですが、父方祖母の“筍の味噌煮”は母が習っているようなので教わりたいです。
大樹の祖母が角煮のレシピを教えたい人を考えながら読むと楽しいのでは。
「第2章 4月の花見にさくら寿司」
碧の友人であることみが、初めてバイトを体験する話。
独り立ちしてみたいとかバイトやってみたいとか考える人も多いので、もう少し深く考えようと思ったときにお勧めしたい話。
大学時代に一人暮らし経験して、今は家に戻っているけど、やっぱりもう学生じゃないから家を出ようかなと考えているので、具体的に考えていかなければならないと身が引き締まった。
「第3章 5月病にはメンチカツ」
碧の母・知弥子と教え子の思い出話。
学校の先生が亡くなるって、中学生にとってはすごい大きな事件。しかも、恩師だったら尚更。
教え子である七海の立場から読んでも、教師である知弥子の立場から読んでも、共感できる部分があると思う。
「第4章 8月花火と氷いちご」
表題になっている物語。
大樹の兄貴分であり、近所の神社の跡取り息子であるマサこと雅晴が家族を連れて実家に戻ってきた話。
引っ越してきたばかりで友人もいないマサの娘の朋夏が、縁日の日に勝手に外に出てしまい、「ゆきうさぎ」のメンバーと常連客で探すことになる。
好奇心旺盛な子供にはありがちな話だが、親になったらきっとハラハラするんだろうなと感じた。
「終章 夏の終わりの店仕舞い」
「ゆきうさぎ」2年目夏最後の話。
表題にかけて花火とかき氷で終わるので、2巻の締めくくりにふさわしい。
<総括>
1巻に比べて、よりリアルな問題を扱っている話が増えた。「ゆきうさぎ」がより身近に感じられる。
おきにいりの話は「5月病にはメンチカツ」。私は生徒である七海の気持ちが一番共感できた。こんな先生いて欲しかった。
こんな人におすすめ
・お料理小説が好きな方
・事件性はないけど現代にありがちな話を読みたい方
・1巻を楽しめた方