「ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが」

『ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが』

著者:小湊 悠貴(こみなと ゆうき)
出版:集英社オレンジ文庫 出版年:2016年2月24日
ページ数:280p ISBN:9784086800679 価格:570円+税 

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「……ケンカできるだけいいじゃないですか」


<あらすじ>

ある事情から、極端に食が細くなってしまった大学生の碧。とうとう貧血で倒れたところを、「ゆきうさぎ」という小料理屋を営む青年、大樹に助けられる。彼の作る料理や食べっぷりに心惹かれた碧は、バイトとして雇ってもらうことに!
店の常連客や、お向かいの洋菓子店の兄妹、気まぐれに現れる野良猫(?)と触れ合ううち、碧は次第に食欲と元気を取り戻していく――。
(引用元:『ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが』裏表紙)



「序章 18時の店開き」

 副題をつけるなら、「猫の恩返し?」もしくは「リアル招き猫」 
先代が亡くなり閉めていた店を継いだ初日。大樹は野良猫に開店サービスとして餌を渡す。その礼なのか、初日に来た客は猫が招いてきた客だった。

「第1章 6時20分の肉じゃが」

大学一年生の碧は、貧血で倒れていたところを大樹に助けられる。彼女の貧血の原因は、母親を亡くしてから食事の味が分からなくなり、食欲を失くしていたことだった。介抱してもらったことをきっかけに、碧は「ゆきうさぎ」のバイトになる。
碧が食べられるようになるまでの話だが、肉じゃがを作っているところとかなんだかほっとする。

「第2章 9時59分の思い出プリン」

「ゆきうさぎ」にプリンを下ろしている桜屋家族の物語。
 父親と息子のいざこざは、娘の立場だと仲裁しづらいこともありますよね。

「第3章 14時5分のランチタイム」

「ゆきうさぎ」の元バイト「ミケ」こと三ケ田菜穂と母親の話。
24歳フリーターは今の世の中割とある話なので、結構感情移入しやすいキャラだと思う。(私は実際そうだからわかる)
フリーターではなくても母に反抗する気持ちはわかる方も多いのでは。

「第4章 23時の愛情鍋」

「ゆきうさぎ」が雑誌に掲載される話。
 無断で取材して、事後承諾というのは、今の世の中よくある話だなと感じた。
 特に殺人事件などになれば勝手にFacebookから写真を持ってこられたり、Twitterで取材交渉してみたり。自分たちできちんとした情報を集めようとしないマスコミみたいで、しっかり取材されている人が割りを食う思いをしているのではないかと考えさせられた。この回は、現代の悪いところを入れこんでいるので、すごくリアルに感じる。

「終章 深夜0時の店仕舞い」

「ゆきうさぎ」一年目最後の話。
 人と人との出会いの暖かさを感じるお話でした。


<総括>

「ゆきうさぎ」というお店を通して人間関係が見られるので、急な展開にハラハラすることもなく、かといって単調でもないので、安心して楽しめる作品。
料理をあまりしない人でも、ちょっとやってみようかなと思えるような一冊です。

こんな人におすすめ

・お料理小説が好きな方
・ホッとした気持ちになる本が読みたい方

集英社より漫画も出ていますので、小説が苦手な方は漫画からでも楽しめる作品だと思います。