『君と星の話をしよう』

『君と星の話をしよう 降織天文館とオリオン座の少年』

著者:相川真(あいかわしん)
出版:集英社オレンジ文庫 出版年:2017年3月22日
ページ数:292p ISBN:9784086801249 価格:600円+税

f:id:hr-ktnh:20180326190320j:plain:h400

「――君の顔にはオリオンがいるんですね」


<あらすじ>

顔の傷が原因で周囲と馴染めず、高校を中退した直哉は、不思議な青年と出会う。
「君の顔にはオリオンがいるんですね」
傷をそんな言葉で褒めた青年・蒼史は、小学生の妹・桜月と天文館を営んでいた。成り行きで天文館に通ううちに、親とのわだかまりや将来の不安がほどけていく。が、蒼史の友人だという「コガネ」の存在が、蒼史の過去に深く関わっていると知って…。
(引用元:『君と星の話をしよう 降織天文館とオリオン座の少年』裏表紙)



「オリオンは宇宙の鍵を回す」

 直哉と蒼史の出会い編。
 正直直哉を取り巻く環境が、フィクションでくくってはいけないのではないかと思うほど過酷。特に高校を辞めた理由。家庭環境の重さは母親の罪悪感だから仕方ないとしても、学校に関してはちょっと行き過ぎな描写があるので、苦手な人は苦手だと思う。
 この本手に取るときは、1話読んでから買った方がいいと感じた。

「北天の絵本」

 母親を亡くした少年・輝と天文館の人々の話。
 輝の母は生前、輝を主人公にした絵本を書いていた。最期に遺した絵本の主人公は輝とその父親。その絵本にはある謎が隠されていた。
 輝と父、蒼史と桜月、直哉とその両親の話でもあり、「オリオンは宇宙の鍵を回す」で中々にしんどい家庭環境だった直哉が勇気を出す。輝と父の関係性はシンプルに胸を打つし、桜月の告白も涙腺に来るが、直哉の行動にも心動かされるような話だった。

ペルセウス・ゲーム」

 蒼史のお見合い話。
 前2話で少しだけ出て来る「コガネ」という登場人物への導入編。これを前提に次話に行ってほしい。

アルビレオは見つからない」

 蒼史が虐待していると疑われる話。
 正直小学生の女の子が家事をしていることに対して(さらに怪我をしていることに対して)大人が妙な勘繰りをしてしまうことも、子どもが正義感を発揮することもあり得ない話ではないが、両親のいない状況で料理が出来る子が料理をするという状況を虐待と決めつけるのはどうかと思う。いくらフィクションでも、ちょっとこの物語の中の周りの人間が酷すぎる。
 この世界でシングルファザーとかシングルマザーがいたらみんながみんな虐待しているって一度は通報されていそう。


<総括>

 「家族の在り方はそれぞれだ」という事をテーマにしているが、メインの登場人物を取り囲む環境がなかなかに酷なので、冷たい人や善意で人を傷つける人物が嫌な人は苦手かもしれない。
 星の話は興味深く、主人公と降織私立天文館の人々に絞って読むなら、温かい話。
 個人的には「北天の絵本」が綺麗なお話で好き。


こんな人におすすめ

 ・星の話が好きな人
 ・こじれこじれた人間関係のお話が読みたい人
 ・家族の話が読みたい人

 元気のある時に読んだ方がいいかもしれません。沈んでる時に読むとちょっとしんどいかも。落ち込み切ってしまっていれば、逆に温かく感じるかもしれません。