『香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~』
『香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~』
著者:浅葉なつ(あさばなつ)
出版:メディアワークス文庫 出版年:2013年6月25日
ページ数:362p ISBN:9784048917513 価格:630円+税
<あらすじ>
犬並みの嗅覚を持ちながら今までその能力を美味しいものを食べることにしか使ってこなかった秋山結月。
そんな彼女が大学で出会ったのは、古今東西の香りに精通する香道宗家跡取り・神門千尋<家出中>だった。
人嫌いの千尋に邪険にされつつも、結月は次第に新しい世界に魅了されていく。今まで意識しなかった様々な香りに耳を傾けると、彼らは何より饒舌に秘密を語っていた。
人々が香りに託した様々な想いを読み解いていく、ほのかなアロマミステリー!
(引用元:『香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~』裏表紙)
「試香」
ファッションセンスが独特で、周りと違うことからいじめられていた結月と祖母の物語。
結月の祖母の慈しみ方が、本当に優しくて、癒される。
「一炉 初恋」
結月と千尋の出会いと初めての謎の物語。
結月と仲がいい男子大学生である啓太は、一年前に交通事故で幼馴染の女の子を亡くしていた。彼女の遺した手紙には文字がなく、残っているのは香りだけ。その香りを嗅ぎ取った結月は、香りに詳しい千尋と共に香りの正体を探る。
結月の香りだけで美味しいお店を見つけられる特技が素敵。
「二炉 勝れる宝」
*二炉 勝れる宝
神門家と縁のある住職・海棠が千尋の従兄を通して千尋に依頼する話。
檀家の娘の結婚祝いに香を贈りたいという海棠が、千尋や結月、千尋の従兄である隆平に三種類の香りを聞いてもらう。香道の家で育った千尋と隆平は香りから情景をイメージする結月に新鮮味を感じる。
香道という普通ではあまり触れないものを題材としているが、なんとなくイメージできる話だった。とくに香道初心者の結月の感覚が読者に寄っていて分かりやすい。
「三炉 君を想う」
結月の年下の友人・愛実とその友達の話。
高校生の愛実は煙草を所持していたことが持ち物検査でバレ、停学になる。なぜそんなことになったのか、結月が聞き出し、分かったのは愛実の友人が関係していることだった。
「香、満ちる」
三炉の完結編。
<総括>
全体的に香りにまつわるミステリーなので、読んでいる最中、「これってどんな香りだったっけ?」となる。そこも楽しめると、この本は物語としても、香りとしても楽しめると思う。
香りに詳しくなくても、結月の感性は食べ物が好きなひとに近いので、ある程度は楽しめる作品。