おかえりの神様
『おかえりの神様』
著者/鈴森丹子
発行/株式会社KADOKAWA(メディアワークス文庫)
2016年6月25日 初版発行/¥590+税
ただ居座るだけ。ただ「ただいま」と言わせてくれるだけ。
<あらすじ>
就職を機にひとりぼっちで上京した神谷千尋だが、その心は今にも折れそうだった。些細な不幸が積もり積もって、いろいろなことが空回り。誰かに相談したくても、今は深夜。周りを見回しても知り合いどころか人っこひとりもいない。
……でも狸ならいた。寂しさのあまり連れ帰ってしまったその狸、なんと人の言葉を喋り出し、おまけに自分は神様だと言い出して……?
『お嬢、いかがした? 何事かとそれがしに聞いて欲しそうな顔でござるな』
こうして一日の出来事を神様に聞かせる日課が誕生した。“何でも話せる相手がいる”、その温かさをあなたにお届けいたします。
(引用元:『おかえりの神様』裏表紙)
<感想(ネタバレなし)>
Twitterで見て、表紙の絵に惹かれていた1冊。
語り手がバトンタッチをしながら、物語を紡いでいく物語です。
侍口調の狸に、花魁口調のビーバーがキーです。ちょっと狸さん、うちに来ませんか……が、感想でした。
追記では、1篇ずつネタバレありの感想です。
<総括>
こんな神様がいてもいいな、と思うお話でした。八百万の神がいる国ですからね、いろんな神様がいますよね。2017年最初の本がこの本でよかったかなと思います。
にしても、千尋のモテ期、私にも来ないかしら。
<お話しごとの感想>
『序章』
ふわっとした会話がとってもキュート。今何時代だっけと思うのは、口調のせいですね。
『同居の神様』
神様がいない、って一度は考えますよね。誕生日にこんなちっちゃい不幸重なるの嫌だなぁ。塵も積もれば山となると言いますが、不幸が山になってもねぇ。あ、でもそのああと帰ってくるものが多かったような気がする。
天野がいい男だな、と。
山の神様も家にいてくれるの良いなぁ。うちにも来てくれないかなぁ。
『銭湯の神様』
天野が主役の回です。すごく、真面目というか、器用貧乏というか。苦労性なのかな、この人って印象でした。『同居の神様』とちょっとイメージ変わりますね。
千尋の料理が、そらないわって感想でした。でもうちの父も、母曰くカレーが下手らしいんですよね。ちゃんと料理したりできるのに。もっとぶきっちょな私や器用な弟のほうが、家のカレーは上手く作れる不思議。
銭湯で、天野の心が癒されるなら、何よりです。お風呂は癒しですが、私は銭湯が苦手なので、温泉と置き換えると分かるような気がしました。
マヨネーズが苦手なので、山の神様をお迎えできないかも、と思いました。
『晩酌の神様』
千尋と天野の先輩のお話。
初恋の女の子が忘れられないって、すごくピュアで、一途で素敵だなぁと。こんな風に思われてみたいな。
リアリストな信也さんが、捕まえたというか引っかかった女の子は、これまた一途で、でもちょっと狂気を感じて、怖くもなりました。
うーん、いつまで騙せるかな。
チョコ狂いのビーバー、それでいいのか。
『甘味の神様』
信也のお相手のお話。
計算高くて、打算的で、小賢しい。そんな感じの女の子ですが、本気で誰かを思っているからこそ、こうなったのかなぁと。やり方が正しいとは言えませんが、彼女の一途さも魅力の一つだと思います。
逆転ホームランって感じでよかったね。
『続・同居の神様』
1話目でもやっとしたのが、解決したというか。予想していた通りになった感じです。
終わり良ければ総て良しみたいな感じでした。