平成最後の本紹介

おつひよ。
平成最後に何か書こうと思ったのですが、まったく何にも思いつかなかったので、ラストの本紹介しようと思います。

タイトル:『葉桜』
著者:橋本 紡(はしもと つむぐ)
出版:集英社文庫 出版年:2014年4月25日
ページ数:278p ISBN:9784087451856 価格:540円+税

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「字なんか、ただ真似たっておもしろくないよ。その人がどういう思いで筆を取ったのか、なにを伝えたかったのか、ちゃんと気持ちを理解したうえで書いたほうがいい。意味も知らないまま、ただ上手になったって仕方ないだろう」



<あらすじ>

高校三年生の佳奈は、書道教室の先生に長い片思いをしている。けれど、先生には奥さんがいた。叶わない思いを胸に、佳奈は日々教室で文字を書く。先生が見せた、知らなかった一面。美人で天才の妹・紗英が抱える、命のリミット。書道に打ち込む同い年の津田くん。周囲の人々に背中を押されるように佳奈のなかで何かが変わってゆく――。
 春から夏へ、少女から大人へ。まぶしく切ない青春恋愛小説。
(引用元:『葉桜』裏表紙より)



<総括>

 普段の本紹介であれば、一章ずつざっくり内容紹介をするのですが、今作はそれが難しいので、完全に感想文です。

 私がこの本を買ったのは、大学生の頃でした。関西の大学に通うため、一人暮らし中。買ったきっかけは、高校の頃の司書の先生が『九つの、物語』を在学中に薦めてくれ、橋本さんの描く物語が好きだったからだと記憶しています。
 購入当時に読んだ記録を見つけ出したので、当時の感想も書いておこうかな。

 毎度本紹介で、画像の下に気に入った文を一文載せているのですが、大学生の私は今の私と違う一文に惹かれていたようです。

「思いは深く沈めたくらいでちょうどいいんだよ」

 1で先生が佳奈に伝えた言葉です。最後まで読むと、この一文も佳奈の中にきちんと残っていて、だからこそ、想いの伝え方が風情と情緒あるものになったのだと思います。
 また、妹の紗英を桜にたとえた祖父や、紗英の部屋で見た光景が引っかかっていて、大学生のときの私は一章ずつ丁寧に読むタイプだったのだなと感じました。
 現在の私は、一気に読み進めることが増えたので、印象に残っているのがどうしても後半or前半になるのですが、大人になったからか先生の考えやありかたに注目して読んでいた気がします。
 高校生の佳奈の想いに、真摯に、けれどはっきりと拒絶するように答えられたのは、彼が字だけではなく、短歌の意味一つ一つを普段から考えていたからだという気がして。
 同じように短歌や俳句を勉強していた身ですが、ここまで真摯に向き合えたかというとそんなことはなかったなと思うので、今後小説を読む中でも一つ一つの表現にアンテナを立てていきたいなと感じさせられる内容でした。

こんな人におすすめ

・甘すぎない恋愛小説が読みたい方
・ほんのり、少し寂しい小説が好きな方


平成は大変お世話になりました。
いつになってもおそらくマイペース更新ですが、それでも良ければ令和もよろしくお願いいたします。

「ららら日和」柚咲はる。