『舞妓さんちのまかないさん』

舞妓さんちのまかないさん』シリーズ

著者/小山愛子
発行/小学館
第1巻、2017年4月17日 初版発行/¥600+税

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今夜も元気に舞妓さんでいてもらうこと。それが私のおしごとです。


<あらすじ>

ここは京都のど真ん中にある花街。
舞妓さんたちが共同生活を営む「屋形」と呼ばれるおうち。
ある屋形で「まかないさん」として舞妓さんたちに毎日の食事を作っている少女・キヨは16歳。
花街の舞台裏、ふつうの日のごはんを通しあたたかな人間模様を描く台所物語。
(引用元:『舞妓さんちのまかないさん 1』裏表紙)

<感想という名の総括>

 青森から舞妓になるために上京してきたキヨとすみれ。本作の主人公はキヨですが、キヨが舞妓見習いである仕込みをクビになり、まかないさんになるため、舞妓視点の作品は幼馴染のすみれのものが多いです。
 何か事件が起こるような物語ではなく、日常の一コマを切り取ってみたり、舞妓さんの行事に関わるお話だったりと、ほのぼのしたお話です。中学時代のお話や地元に里帰りした時の話などは、キヨとすみれの幼馴染の男の子とキヨの保護者であるおばあちゃんが出てきて、青森の郷土料理を作っているので、青森出身の方はなじみ深く感じるのではないでしょうか。
 私は京都にちょこっといた時期があるだけなのですが、舞妓さんの行事や修学旅行生が多い時の舞妓さんの大変さが分かり、舞妓さんを支える人たちの凄さも感じられてとても面白かったです。
 現在は8巻まで発行されています。

こんな人におすすめ

・ご飯ものが好きな方
・舞妓さんなど京都の文化が好きな方
・青森出身・京都出身の方
・和が好きな方
・お正月にちょっと何か読みたい方

『コーヒーが冷めないうちに』

いつも閲覧ありがとうございます。
はてブロさんから初めて通知来て嬉しかったです!
なかなか更新頻度は高くありませんが、これからもよろしくお願いします。
また、コメント等でお勧めの本など教えて戴けましたらレビューいたします。

というわけで、今回は映画を見て買うことを決めたこちらの本のレビューです。

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タイトル:『コーヒーが冷めないうちに

著者:川口 俊和(かわぐち としかず) 
出版:サンマーク出版 出版年:2015年12月6日
ページ数:348p ISBN:9784763135070 価格:1300円+税

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「ここに来れば、過去に戻れるって、ほんとうですか?」



<あらすじ>

とある街の、とある喫茶店
とある座席には不思議な都市伝説があった
その席に座ると、望んだとおりの時間に戻れるという

ただし、そこにはめんどくさい……
非常にめんどくさいルールがあった

1.過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事はできない
2.過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない
3.過去に戻れる席には先客がいる
その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ
4.過去に戻っても、席を立って移動する事はできない
5.過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、
そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ

めんどくさいルールはこれだけではない
それにもかかわらず、今日も都市伝説の噂を聞いた客がこの喫茶店を訪れる
(引用元:『コーヒーが冷めないうちにサンマーク出版HPより一部抜粋)



プロローグ

全編通して共通のルールを提示しているのでわかりやすい。

第一話『恋人』結婚を考えていた彼氏と別れた女の話

 年上彼女が年下彼氏のアメリカ行きで悩む話。
5W1Hをはっきりと提示していて今どんな状態なのかわかりやすい。
 二美子以外の登場人物が平井を除いて落ち着いた登場人物なので、ひとり焦ってドタバタしている感じが良く出ている。

第二話『夫婦』記憶が消えていく男と看護師の話

 アルツハイマーに罹った夫と妻として支えている看護師の話。この物語でだけでも心動かされるが、設定が変わった映画でもよかったエピソードなので、ぜひ見てほしい。
 夫の行動の意味も考えるととても尊くて、自分を忘れられるっていう体験はしたくないけど、こんな夫婦に憧れる。

第三話『姉妹』家出した姉とよく食べる妹の話

 老舗旅館の跡取り娘である平井が家を飛び出してからも説得に来る妹との話。
 諦めずに説得し続ける妹の気持ちとそんな妹に逢いたくない姉の気持ち、どちらもわかるからこそしんどくなる気がした。

第四話『親子』この喫茶店で働く妊婦の話

 喫茶店のマスター流の妻・計と流と計の子どもの話。
 未来がどんな風になっているのか、見に行く勇気は凄いと思う。

<総括>

 以前から気になっていた作品で、映画に伴って文庫化しないかなと思ってたんですが、しなかったのでソフトカバーで購入しました。
 元々舞台脚本のため、台本を小説にしたらこんな感じという文章ですが、逆にそれが淡々としていてわかりやすいと思います。特に舞台の脚本だった名残でもある狭い喫茶店の描写が想像しやすいかと。
 この作品は映画にもなりましたので、映画から入る人もいると思いますが、映画とは設定が一部違うため、何度も同じ話は嫌という人でも相違点を探しながら読める作品だと思います。
 正直映画のキャッチフレーズで本の帯にもある『4回泣ける』は信用できないと思っていましたが、実際涙は流さなくても心は動かされると思います。

こんな人におすすめ

・感動モノが好きな方
・人間ドラマが好きな方
・舞台・映画が好きな方
・日常の中の非日常を楽しみたい方

『マリー・アントワネットの日記 Rose』

タイトル:『マリー・アントワネットの日記 Rose』

著者:吉川トリコ(よしかわ とりこ) 
出版:新潮文庫nex 出版年:2018年8月1日
ページ数:256p ISBN:9784101801308 価格:550円+税 

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オーストリアから連れていける唯一のあたしの親友」


<あらすじ>

ハーイ、あたし、マリー・アントワネット。もうすぐ政略結婚する予定www
1770年1月1日、未来のフランス王妃は日記を綴り始めた。オーストリアを離れても嫁ぎ先へ連れてゆける唯一の友として。冷淡な夫、厳格な教育係、衆人環視の初夜……。
サービス精神旺盛なアントワネットにもフランスはアウェイすぎた――。
時代も国籍も身分も違う彼女に共感が止まらない、衝撃的な日記小説。
(引用元:『マリー・アントワネットの日記 Rose』裏表紙)



1770年1月~4月

 マリー・アントワネットが、オーストリアからフランスへ嫁ぐ年の話。
1月1日から始めようとして、書き出しに悩んで結局書くのが3日から書き始める。そんなところが、とても現代人にもあり得ることで、共感した。

1770年5月~8月

 フランス入りした月の話。
 初夜の日の話は、フランスのしきたりを現代の感覚でマリーがコメントしているが、当時のヴェルサイユ人の異常さがわかるシーンでもある。
 夫の態度が冷たくて、不安になる様子など生々しく描かれている。
 公妾がいることで、問題になるのは仕方がない気も。

1771年以降

 突然、夫との関係が深まるようになったり、政治に巻き込まれたり。
 嵐のような勢いで流れていく。

<総括>

 幼いけれど、現代的な感覚を持ったマリー・アントワネットが徐々にヴェルサイユに染まったり、やっぱりオーストリア人らしかったりと、ちょっと特殊な環境に生まれてしまっただけの女の子のリアルな日常がつづられているような話。
 後半はかなり勢いで書かれている。
 ネット用語やJKが使う言葉も用いられるが、注釈が入っているのでかなり読みやすいのでは。

こんな人におすすめ

マリー・アントワネットが好きな方
・歴史に興味はあるけれど、堅苦しいのは苦手と言う方
・ネット用語などに抵抗がない方

こんな人は気をつけて

・記号小説が苦手な人(例:///)
・ネット用語が苦手な人(例:OMG、kwskなど)

余談

 私はFGOというアプリが好きで、マリー・アントワネットに興味を持って入ったのですが、違う方の書いているお話なのでやっぱりヴィヴ・ラ・フランスの王妃様とは違うものの背景が分かって面白いです。

下書きにしていた記事

おつひよ。
1年前の読書記事ですが、先程一記事を残してすべて公開いたしました。
本当は統一して書きたかったんですけど、積読本が増えすぎてしまったので公開する方に切り替えました。
追々、積読本が減ったら再読記事として新規投稿したいなと考えています。

そんな感じで暑いですが今月は何記事が投稿できるように!ちょっとずつ本を読んでいこうと思います。

『ぼぎわんが、来る』

お久しぶりです。
更新しなきゃと思っているうちに8月になってしまいました。
酷暑やら大暑やらいろんな言い方で表現している「暑さ」のやばい夏ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回は7月中に読んだ作品から、「涼」をお届けできる作品の紹介です。


タイトル:『ぼぎわんが、来る』

著者:澤村伊智(さわむら いち) 
出版:角川ホラー文庫 出版年:2018年2月25日
ページ数:375p ISBN:9784041064290 価格:680円+税 

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「ごめんください」


<あらすじ>

〝あれ〟が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん――。
 幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。一連の事象は亡き祖父が恐れた〝ぼぎわん〟という化け物の仕業なのか。
 愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが……!?
 全選考委員が大絶賛! 第22回日本ホラー小説大賞<大賞>受賞作。
(引用元:『ぼぎわんが、来る』裏表紙)



「第一章 訪問者」

田原秀樹視点の話。幼い頃祖父母の家で起こった怪異が、25年の時を経て帰ってくる。
秀樹視点のため、娘や妻に気を遣ういい父親に見えるが……。
(まあ、そんなことはなかったよね。ところどころまじくずっぷり出てたし。ちょっと香奈が気弱な奥さんに見える)

「第二章 所有者」

 香奈視点での第一章その後。
 あれほど一章ではいい父親をしていたような秀樹は、奥さんに亡くなったことを悲しまれないような人だったんだな。ちょっとまあすごいな、よくあれだけ自信を持てたなと思うレベルのひどさ。
 香奈が悪いところはないというわけではないけど、ちょっと本気でこわ……。だって、香奈は自覚してるもんな何が悪いのか。

「第三章 部外者」

 オカルトライターである野崎視点の話。
 香奈や知紗の様子も描かれ、簡潔に向けて物語は進む。

<総括>

ぼぎわんの謎が、三人の視点で解き明かされていく。ホラーにありがちな犠牲者が出るものの、どうしてことが起きたのかが説明されていて、読みやすい印象。
また、夫婦の問題などにも焦点が当てられているので、現実的な部分と非現実的な部分が織り交ぜられていてとても良かった。
主観と客観の落差も味わえるので、面白い作品。

こんな人におすすめ

・ホラーが好きな方
・ぼぎわんの小隊が気になる方
・映画「来る」の予習がしたい方

余談

凄いどうでもいいことかもしれませんが、個人的にはハードカバーの表紙のほうが好きです。
気になる方は是非一度見てみてくださいね!
また、映画は今年の12月公開だそうです。キャストは決まっているので、誰が誰の役をやるのかをチェックした後に読むと、なかなか面白いかもしれません。

『ゆきうさぎのお品書き 熱々おでんと雪見酒』

タイトル:『ゆきうさぎのお品書き 熱々おでんと雪見酒

著者:小湊 悠貴(こみなと ゆうき) 
出版:集英社オレンジ文庫 出版年:2017年1月25日
ページ数:246p ISBN:9784086801164 価格:550円+税 

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「ゆっくりでいいんだよ。このさき何十年もつき合っていく家族なんだから」


<あらすじ>

小料理屋「ゆきうさぎ」でバイトをしている大学生の碧。秋のある日、店に訪れた女性客と店主の大樹が何かを話していた。女性は大樹の弟、瑞樹の奥さんだという。わざわざ店を訪ねてきたことには理由がありそうだが、話したくないようで?
“おいしい”シリーズ第3弾!
 思い出のおでん、恋を応援する練り切り、心を解きほぐすおやき…などをご用意しています。
(引用元:『ゆきうさぎのお品書き 熱々おでんと雪見酒』裏表紙)



「序章 過去のある日の店開き」

 大樹が大学に入学する前のある日の店開きの風景。
 まだ大樹の祖母である先代女将が存命しているので、1巻2巻ではわからなかった為人がほんの少し垣間見えるお話。

「第1章 晩秋時雨と牛しぐれ」

 大樹の弟嫁であるひかるが、大樹の実家の旅館の仕事に慣れず、心身のバランスを崩していたところを、すこしだけ助ける話。
 大樹や碧のしたことで、完全に復活するかと言ったら難しそうな症状のひかるだが、誰かに手を差し伸べてもらえるのと差し伸べてもらえないのでは雲泥の差なので、復活するきっかけにはなったのでは。

「第2章 熱々おでんと雪見酒

 大樹がある手紙をきっかけにバイトふたりに過去の話をする。
 人も街も生きている限り不変という事はないけれど、変わって行く先が良い方向だと嬉しい。

「第3章 春の宵には練り切りを」

 商店街にあるケーキ屋・桜屋と駅ビルの中にある和菓子屋・くろおやの店主とその子どもたちの話。
 親の都合で子供まで振り回されるのは溜まったもんじゃないと思うけど、桜屋の娘の星花もくろおやの息子の慎二も高校卒業してるからこそ、親のために動けるのだと感じた。
 高校生で卒業までにちゃんと料理憶えるって偉い。私はレシピ見れば見た目はともかく食べれる味になるので、教わったりしなかったな。ちゃんと人に教わるべきだったかも。

「第4章 梅雨の祭りと彩りおやき」

 商店街の6月キャンペーンの話。
 1巻第4章で「ゆきうさぎ」の記事を書いたライター初登場回。自分のしてしまったことに気づける人物だったという事が分かってよかった。大樹の人の好さが一番出ている話かもしれない。

「終章 現在のある日の店仕舞い」

七夕の日の店仕舞いの様子。

「ふろく 牛しぐれ&おやきレシピ」

 この間から初めてレシピが巻末に着いた。
 作中の料理全てを紹介しているわけではないが、ゆきうさぎのレシピが気になっている人はぜひ挑戦してほしい。

<総括>

 全体的に過去の確執だったり、出来事だったりが現在になって解決していくような内容だった。「ゆきうさぎ」の過去も現在も知れる形だったので楽しめた。
 前の巻のおさらい的なお話。
 こんな雰囲気のお話ですよ、と思い出してもらう導入で、物語に入りやすい。1巻は大晦日で締めくくられていたので、読者の知らない空白の期間があるが、それもいつもどおりの「ゆきうさぎ」だったんだろうなと推測できるような書き方をされている。

こんな人におすすめ

・お料理小説が好きな方
・ほっとするお話が読みたい方
・「ゆきうさぎ」を好きな方

『ゆきうさぎのお品書き 8月花火と氷いちご』

『ゆきうさぎのお品書き 8月花火と氷いちご』

著者:小湊 悠貴(こみなと ゆうき)
出版:集英社オレンジ文庫 出版年:2016年7月25日
ページ数:246p ISBN:9784086800945 価格:550円+税

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「『ゆきうさぎ』は、お父さんの聖域だから」


<あらすじ>

小料理屋「ゆきうさぎ」でバイトを続けている大学生の碧。若店主の大樹は最近、豚の角煮の研究をしている。先代の女将が、唯一レシピを教えてくれなかった料理だそうだが、その理由とは一体…?
暖簾をくぐれば“おいしい”が聞こえる、小料理屋が舞台のほっこりドラマ。仲直りの手まり寿司、憂鬱に効くメンチカツ、再会の日替わりかき氷……などをご用意しています。
(引用元:『ゆきうさぎのお品書き 8月花火と氷いちご』裏表紙)



「序章 夏のはじめの店開き」

 前の巻のおさらい的なお話。
 こんな雰囲気のお話ですよ、と思い出してもらう導入で、物語に入りやすい。1巻は大晦日で締めくくられていたので、読者の知らない空白の期間があるが、それもいつもどおりの「ゆきうさぎ」だったんだろうなと推測できるような書き方をされている。

「第1章 2月と大樹のとろとろ角煮」

 先代女将である祖母から料理を教わっていた大樹は、豚の角煮だけレシピを教わっておらず、自己流で先代の味を研究していた。遺品整理の際に見つけたレシピで角煮を作ってみたが、女将の味を知っている常連は「違和感がある」と言う。
 祖母に料理を習うっていい環境。柚咲は祖母の料理にあまり馴染みがないのですが、父方祖母の“筍の味噌煮”は母が習っているようなので教わりたいです。
 大樹の祖母が角煮のレシピを教えたい人を考えながら読むと楽しいのでは。

「第2章 4月の花見にさくら寿司

 碧の友人であることみが、初めてバイトを体験する話。
 独り立ちしてみたいとかバイトやってみたいとか考える人も多いので、もう少し深く考えようと思ったときにお勧めしたい話。
 大学時代に一人暮らし経験して、今は家に戻っているけど、やっぱりもう学生じゃないから家を出ようかなと考えているので、具体的に考えていかなければならないと身が引き締まった。

「第3章 5月病にはメンチカツ」

 碧の母・知弥子と教え子の思い出話。
 学校の先生が亡くなるって、中学生にとってはすごい大きな事件。しかも、恩師だったら尚更。
 教え子である七海の立場から読んでも、教師である知弥子の立場から読んでも、共感できる部分があると思う。

「第4章 8月花火と氷いちご」

 表題になっている物語。
 大樹の兄貴分であり、近所の神社の跡取り息子であるマサこと雅晴が家族を連れて実家に戻ってきた話。
 引っ越してきたばかりで友人もいないマサの娘の朋夏が、縁日の日に勝手に外に出てしまい、「ゆきうさぎ」のメンバーと常連客で探すことになる。
 好奇心旺盛な子供にはありがちな話だが、親になったらきっとハラハラするんだろうなと感じた。

「終章 夏の終わりの店仕舞い」

「ゆきうさぎ」2年目夏最後の話。
 表題にかけて花火とかき氷で終わるので、2巻の締めくくりにふさわしい。


<総括>

1巻に比べて、よりリアルな問題を扱っている話が増えた。「ゆきうさぎ」がより身近に感じられる。
おきにいりの話は「5月病にはメンチカツ」。私は生徒である七海の気持ちが一番共感できた。こんな先生いて欲しかった。


こんな人におすすめ

・お料理小説が好きな方
・事件性はないけど現代にありがちな話を読みたい方
・1巻を楽しめた方

「ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが」

『ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが』

著者:小湊 悠貴(こみなと ゆうき)
出版:集英社オレンジ文庫 出版年:2016年2月24日
ページ数:280p ISBN:9784086800679 価格:570円+税 

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「……ケンカできるだけいいじゃないですか」


<あらすじ>

ある事情から、極端に食が細くなってしまった大学生の碧。とうとう貧血で倒れたところを、「ゆきうさぎ」という小料理屋を営む青年、大樹に助けられる。彼の作る料理や食べっぷりに心惹かれた碧は、バイトとして雇ってもらうことに!
店の常連客や、お向かいの洋菓子店の兄妹、気まぐれに現れる野良猫(?)と触れ合ううち、碧は次第に食欲と元気を取り戻していく――。
(引用元:『ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが』裏表紙)



「序章 18時の店開き」

 副題をつけるなら、「猫の恩返し?」もしくは「リアル招き猫」 
先代が亡くなり閉めていた店を継いだ初日。大樹は野良猫に開店サービスとして餌を渡す。その礼なのか、初日に来た客は猫が招いてきた客だった。

「第1章 6時20分の肉じゃが」

大学一年生の碧は、貧血で倒れていたところを大樹に助けられる。彼女の貧血の原因は、母親を亡くしてから食事の味が分からなくなり、食欲を失くしていたことだった。介抱してもらったことをきっかけに、碧は「ゆきうさぎ」のバイトになる。
碧が食べられるようになるまでの話だが、肉じゃがを作っているところとかなんだかほっとする。

「第2章 9時59分の思い出プリン」

「ゆきうさぎ」にプリンを下ろしている桜屋家族の物語。
 父親と息子のいざこざは、娘の立場だと仲裁しづらいこともありますよね。

「第3章 14時5分のランチタイム」

「ゆきうさぎ」の元バイト「ミケ」こと三ケ田菜穂と母親の話。
24歳フリーターは今の世の中割とある話なので、結構感情移入しやすいキャラだと思う。(私は実際そうだからわかる)
フリーターではなくても母に反抗する気持ちはわかる方も多いのでは。

「第4章 23時の愛情鍋」

「ゆきうさぎ」が雑誌に掲載される話。
 無断で取材して、事後承諾というのは、今の世の中よくある話だなと感じた。
 特に殺人事件などになれば勝手にFacebookから写真を持ってこられたり、Twitterで取材交渉してみたり。自分たちできちんとした情報を集めようとしないマスコミみたいで、しっかり取材されている人が割りを食う思いをしているのではないかと考えさせられた。この回は、現代の悪いところを入れこんでいるので、すごくリアルに感じる。

「終章 深夜0時の店仕舞い」

「ゆきうさぎ」一年目最後の話。
 人と人との出会いの暖かさを感じるお話でした。


<総括>

「ゆきうさぎ」というお店を通して人間関係が見られるので、急な展開にハラハラすることもなく、かといって単調でもないので、安心して楽しめる作品。
料理をあまりしない人でも、ちょっとやってみようかなと思えるような一冊です。

こんな人におすすめ

・お料理小説が好きな方
・ホッとした気持ちになる本が読みたい方

集英社より漫画も出ていますので、小説が苦手な方は漫画からでも楽しめる作品だと思います。

「citrus」

おつひよ。
今回更新するのは前回読んだ本『香彩七色』からキーワード「香り」をテーマにしたSSです。

前回同様、SS名刺メーカー様を使わせていただき、作成しております。
保存はしてもOKですが、転載・自作発言・画像のクレジットをトリミングするなどの行為はおやめください。

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『香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~』

『香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~』

著者:浅葉なつ(あさばなつ)
出版:メディアワークス文庫 出版年:2013年6月25日
ページ数:362p ISBN:9784048917513 価格:630円+税

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「目に見えるものだけが、この世のすべてじゃないってこと」


<あらすじ>

犬並みの嗅覚を持ちながら今までその能力を美味しいものを食べることにしか使ってこなかった秋山結月。
そんな彼女が大学で出会ったのは、古今東西の香りに精通する香道宗家跡取り・神門千尋<家出中>だった。
人嫌いの千尋に邪険にされつつも、結月は次第に新しい世界に魅了されていく。今まで意識しなかった様々な香りに耳を傾けると、彼らは何より饒舌に秘密を語っていた。
人々が香りに託した様々な想いを読み解いていく、ほのかなアロマミステリー!
(引用元:『香彩七色~香りの秘密に耳を澄まして~』裏表紙)



「試香」

 ファッションセンスが独特で、周りと違うことからいじめられていた結月と祖母の物語。
 結月の祖母の慈しみ方が、本当に優しくて、癒される。

「一炉 初恋」

結月と千尋の出会いと初めての謎の物語。
結月と仲がいい男子大学生である啓太は、一年前に交通事故で幼馴染の女の子を亡くしていた。彼女の遺した手紙には文字がなく、残っているのは香りだけ。その香りを嗅ぎ取った結月は、香りに詳しい千尋と共に香りの正体を探る。
結月の香りだけで美味しいお店を見つけられる特技が素敵。

「二炉 勝れる宝」

*二炉 勝れる宝
 神門家と縁のある住職・海棠が千尋の従兄を通して千尋に依頼する話。
 檀家の娘の結婚祝いに香を贈りたいという海棠が、千尋や結月、千尋の従兄である隆平に三種類の香りを聞いてもらう。香道の家で育った千尋と隆平は香りから情景をイメージする結月に新鮮味を感じる。
 香道という普通ではあまり触れないものを題材としているが、なんとなくイメージできる話だった。とくに香道初心者の結月の感覚が読者に寄っていて分かりやすい。

「三炉 君を想う」

 結月の年下の友人・愛実とその友達の話。
 高校生の愛実は煙草を所持していたことが持ち物検査でバレ、停学になる。なぜそんなことになったのか、結月が聞き出し、分かったのは愛実の友人が関係していることだった。

「香、満ちる」

 三炉の完結編。


<総括>

全体的に香りにまつわるミステリーなので、読んでいる最中、「これってどんな香りだったっけ?」となる。そこも楽しめると、この本は物語としても、香りとしても楽しめると思う。
香りに詳しくなくても、結月の感性は食べ物が好きなひとに近いので、ある程度は楽しめる作品。

こんな人におすすめ

 ・ちょっと変わったミステリーが読みたい人
 ・香道やアロマに少し興味を持っている人

 お腹の空いている時に読むと、うっかり結月の食べているものが食べたくなります。夜中は気をつけて。